Mistral Large 4の重みが公開、1兆パラメータで商用利用も可能
Mistral AIが2026年10月29日(現地時間)、1兆パラメータのMistral Large 4(Le Chonk)の重みをHugging Faceで公開。商用利用は可、MaaS事業者は別ライセンスが必要。
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フランスのMistral AIは2026年10月29日、約1兆パラメータのマルチモーダルモデル「Mistral Large 4」(愛称Le Chonk)の重みをHugging Faceで公開しました(現地時間)。今月初め(ITmediaによると6日)に、重みを公開しないパブリックプレビューとして出していたモデルを、追加の強化学習で改良したうえで、オープンウェイトにした形です。商用利用もできますが、モデルをサービスとして提供する事業者だけは別ライセンスが必要です。
1兆パラメータでも、動くのは52B
モデルカードによると、Hugging Faceのリポジトリ名はmistralai/Mistral-Large-4-1T-A52Bで、総パラメータは約1兆、1トークンあたりで動くのは約52Bです(埋め込み層と出力層を除くと49B)。128のルーティングエキスパートのうち4つと、共有エキスパート1つが有効になる構成で、コンテキスト長は100万トークンと記載されています。
入力はテキストと画像、出力はテキストです。160以上の言語をネイティブに扱うとされ、ITmediaの報道でも日本語を含むと紹介されています。推論の深さ(推論レベル)はLow、Medium、High(既定)の3段階から選べます。Lowは簡単な作業向けで、従来の「推論なし」モードを置き換えるもの、Mediumは日常の作業向け、Highは高い精度が要る難しい用途向けという位置づけです。
ベンチマークはコーディングと防御系が中心
Mistralの発表では、プレビュー公開後の約3週間の強化学習で、オープンウェイトのコーディング性能が最前線に出たと説明しています。主な数値は次のとおりです。
- Cognition FrontierCode 2.0:19.7%(同社の比較で首位)
- Artificial Analysis Coding Agent Index:48%。首位のオープンモデルGLM-5.3とほぼ並び、1タスクあたりのトークン使用量は平均で47%少ない
- Terminal-Bench 4.0:41%。プレビューより13ポイント向上し、出力トークンは30%減
- Artificial Analysis Cyber Index:51%
- BrowseComp:84.5%(SFTチェックポイントの75%から上昇)
- FinWorkBench(Finch):73.3%。オープンモデルではKimi K3に次ぐ2位
- B3 Agent Security Benchmark:攻撃への耐性が97.1%(プレビューは93.3%)
Surge Codeの盲検の比較では、GLM-5.3、Kimi K3、DeepSeek V4.1 Flashより好まれ、評価対象のうちClaude Opus 5.5にだけ及ばなかった、とも書かれています。ただし、これらはMistral自身が公表した結果で、外部の評価機関のものも含まれるものの、条件を自分で揃えて検証した数字ではありません。自社の用途で試すまでは、参考値として読むのが安全です。
サイバー対策は「修正中」と率直に開示
発表の特徴は、サイバーセキュリティへの言及が多いことです。Mistralは、JailbreakBench、StrongREJECT、AgentHarmに含まれるサイバー関連のプロンプトに対する平均拒否率を96.6%とし、オープンモデルで同社が測った中で最も高いと述べています。一方で、防御目的の正当な作業では不要な拒否をしない、とも説明しています。
注目したいのは、プレビュー期間中の実トラフィックを監視した結果にも触れていることです。稼働中の実システムを狙ったブラックボックス攻撃への協力は拒否していたものの、実際の攻撃を後押ししうると判断し、ガードレールを修正中で、今後数か月も更新を続けると書いています。さらに、Orange Cyberdefenseなどのデザインパートナー企業には、ペネトレーションテスト、脆弱性評価、レッドチーミング向けの特化版のプレビューを提供し、アクセスは厳しい審査と契約上の保護の対象で、検証は自社または明示的に許可されたシステムに限り、管理された環境で行うと説明しています。
ライセンスと料金、使い始め方
ライセンスは「Mistral Ecosystem Open-Weight License」で、MITライセンスを修正したものです。利用、改変、ファインチューニング、商用利用ができ、条件は1つだけです。Model-as-a-Service(モデルそのものをサービスとして提供する事業)を営む企業が商用で使うときは、Mistralから別の商用ライセンスを得る必要があります。
APIの料金は、100万トークンあたり入力が0.70ドル、キャッシュ済み入力が0.07ドル、出力が2.10ドルです。使える場所は、Mistral Studio、Mistral API、OpenRouter、Microsoft Foundry、NVIDIAがホストするエンドポイントなどで、vLLMで動かす最適化済みのNVIDIA NIMコンテナも用意されています。自分で動かす場合は、vLLM(推奨)かSGLangが案内されていて、モデルカードにはテンソル並列8GPUの構成例があります。必要なVRAMなどのハードウェア要件は、モデルカードにも発表にも明記されていません(Blackwell GPU向けに、メモリ使用量が小さいNVFP4量子化版の案内はあります)。完全な技術レポートは「近日公開」とされています。
1兆級を「自社で持てる」意味
個人的に面白いと思うのは、商用で自社運用できるオープンウェイトの選択肢が、1兆パラメータ級まで広がった点です。モデルカードの構成例はテンソル並列8GPUで、日本語を含む160以上の言語に対応しているとITmediaは伝えています。こうした規模を考えると、自前で動かせる組織は限られそうで、多くの人はまずAPIやOpenRouterで性能を確かめることになるだろう、というのが筆者の見方です。
もう1つ気になるのは、ライセンスの条件です。社内での利用や、自社アプリへの組み込みは追加のライセンスが要らないと読めますが、組み込み方によってはModel-as-a-Serviceに当たる可能性もあります。事業で使うなら、公式のライセンス文で自分の用途がどちらに入るかを確認してください。モデルをサービスとして提供する事業者は、商用で使う前に、Mistralから別途商用ライセンスを得る必要があります。
出典
- Mistral AI「Mistral Large 4 (Le Chonk) is now open weight」(ページのメタ情報上の公開日は2026年10月29日)
- Hugging Face「mistralai/Mistral-Large-4-1T-A52B」モデルカード
- ITmedia AI+「“でぶねこ”の重み公開 1兆パラメータのAIモデル「Mistral Large 4」(Le Chonk)がダウンロード可能に」(2026年10月30日)
2026年10月31日時点の情報です。
本記事は一般的な情報の提供を目的としています。AIのサービス・機能・料金・仕様は頻繁に更新されるため、最新の内容は各社の公式ドキュメントでご確認ください。「筆者の見解」は一つの考え方です。