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日俳連が声のAI利用ガイドライン、同意は最長1年でバイアウト不可

日本俳優連合が10月15日に「音声に関する生成AI利用ガイドライン」を発表。学習・生成・利用の各段階での書面同意、同意は原則最長1年、対価4種類、故人の声の扱いなどを、全文PDFで確認して整理します。

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日本俳優連合(日俳連)は2026年10月15日、事業者が声優・俳優の声にAIを使うときのルールをまとめた「音声に関する生成AI利用ガイドライン」(Ver 1.0)を発表しました。全22ページ、全22条の文書で、AI学習から生成音声の公開まで、どの段階でも本人の事前の書面同意を求めています。同意の有効期間は原則として最長1年で、まとめて許諾を得る「バイアウト契約」は認めないとしています。声のAIを開発したり、作品に使ったりする事業者にとっては、契約の作り方に直結する内容です。

3つの段階それぞれに、別々の書面同意が必要

ガイドラインは、AIの利用を3つの段階に分けています。事業者は、契約書とは別に、事前通知と重要事項を記した承諾書を用意し、段階ごとに実演家の独立した個別の同意を得なければなりません(第8条)。

  1. 分析・学習の段階:音声データをAIに分析・学習させる、あるいはプロンプトを入力する。
  2. 生成・構築の段階:声質や話し方を再現するデジタル・レプリカなどを作り、保存・管理する。
  3. プロジェクトでの利用段階:生成した音声を、特定の作品やプロジェクトで提供・配信する。

口頭の同意や暗黙の了解、事後の承諾は、無効として扱われます。テレビCMやWeb広告、SNS広告に使う場合は、上の同意に加えて、商品や広告キャンペーンごとに、セリフなどの具体的な内容について同意が必要です。新しい作品やシリーズ、想定していなかった媒体での利用も、最初の契約でまとめて取らず、必要になった時点でその都度、同意を取ることになっています。

事前通知の期限も決められています。新しくモデルを作る場合は、音声データの提供や収録、開発着手の7日前まで。すでに同意を得たモデルで生成・編集をする場合は、セッション開始の48時間前までです。

同意は原則1年、更新のたびに条件を再協議

同意とそれに基づく契約の有効期間は、原則として最長1年です(第12条)。続けて使うなら、最新の技術動向と利用の実態を踏まえて、対価や条件を再協議し、改めて書面の同意を得ます。ゲーム開発やアニメ制作のように制作期間が長い場合は、合理的な理由があるときに限って1年を超える有効期間を定められます。ただし、無期限の同意や、定期的な見直しを拒む契約は、無効とされています。

対価は通常の出演料とは別に、4種類を想定

第16条は、AI利用を、再生産や拡張ができる無形資産への転換を伴うものと位置づけています。そのため、通常の出演料とは別に、次の対価を定めるとしています。

  • 学習・開発料:音声データの提供や、デジタル・レプリカの開発に同意する場合
  • 生成AI使用料:生成音声を特定の作品やプロジェクトで使う場合
  • 追加使用料:生成音声をCMや広告・宣伝に使う場合
  • 多言語化使用料:AIで多言語化して海外展開する場合

対価の協議がまとまらなければ、事業者はAI利用をしてはならないとされています。決め方については、前払い、定額制、ロイヤリティ、レベニューシェアなどが例示され、媒体や展開国数、配信形態などを総合して決めるとあります。

吹き替えは原則AIで代替しない。故人の声の新作利用は認めない

アニメや外国作品の吹き替えなど、演技が求められる日本語版の音声作品は、原則としてAIで実演家を代替しないよう求めています(第14条)。ノイズ除去や音質改善、口の動きに合わせる最小限の音素の調整などは、合意の範囲で限定的に認められます。

亡くなった実演家の声は、原則としてAIで利用してはならないとされます(第6条)。例外は、死亡時点ですでに制作が始まっていた続編や、本人が生前に出演に合意していたプロジェクトで、しかも人間による代替が客観的に不可能な最小限の範囲に限られます。その場合も、遺族と所属事務所の書面同意と、生前と同等以上の利用料の支払いが条件です。故人の声を使った新作は「一切認められません」と書かれています。

データ管理と、撤回時の削除・ログの開示

事業者には、音声データやプロンプト、生成されたモデルの管理も求められます(第17条)。暗号化、アクセス権の限定、利用ログと第三者への提供履歴の記録が挙げられています。同意の撤回が事業者と実演家の間で合意された場合は、合意の日から30日以内に音声データとプロンプトを削除し、学習・微調整したモデルは速やかに退役させて以後の利用を停止するとされています。さらに第18条は、権利侵害の合理的な疑いがあるとき、実演家が学習データやログなどの開示を請求できると定めています。他人の個人情報や営業秘密が混じる部分は黒塗りにしたうえで、請求から14日以内に開示するよう求めています。

拘束力はないが、契約の物差しにはなる

ITmediaの報道によると、このガイドラインに法的な拘束力はなく、まずは業界内の基準として定着させることを目指しています。日俳連は、告知ページで、声を包括的に守る明文法が日本にない点を策定の理由に挙げています。ITmediaは、関連する動きとして、法務省が2026年8月に無断利用が権利侵害となりうるという見解を示したことと、9月に声優の津田健次郎氏の訴訟で、東京地裁が声もパブリシティー権の保護対象になり得ると示しつつ、削除請求は棄却したことを伝えています。

このガイドラインの実務上の重みは、強制力よりも、そのまま契約条項に写せる具体性にあると考えます。たとえば第12条の「原則最長1年」を受け入れれば、長期のゲームやアニメ案件でも年1回の条件見直しを契約に組み込むことになります。第16条の4種類の対価は、出演料に一括で含めてきた見積もりを、項目ごとに分ける作業につながります。第7条の7日前・48時間前の通知は、収録やAI生成の日程を逆算して組む前提になり、急な差し替えにAIを使う運用とは相性がよくありません。ITmediaによると、日俳連の副理事長は、業界内に「手続きが大変だ」という反応があったと明かしています。それでも、法的な線引きがまだ定まっていない以上、条文に沿った承諾書とログを残しておくことが、後で自社の手続きを説明する材料になるはずです。

参考にした情報

2026年10月18日時点の情報です。

本記事は一般的な情報の提供を目的としています。AIのサービス・機能・料金・仕様は頻繁に更新されるため、最新の内容は各社の公式ドキュメントでご確認ください。「筆者の見解」は一つの考え方です。